30代で「もう遅い」と思ってしまう夜に、考えたこと

日常

30代で「もう遅い」と思ってしまう夜に、考えたこと

ふとした瞬間に、焦ることがある。

事業を立ち上げて、経済的に自由になりたい。そう思っているのに、まだ何者にもなれていない。もう30代も後半にさしかかった。20代のうちから、こういうことを真剣に考えて動いていれば良かった。でも、動けていなかった。

そんな夜が、たまにある。

今、自由な時間が欲しい。今、お金が欲しい。子供に、いろんな経験をさせてあげたい。旅行に行くなら少しいいプランを選んだり、いいホテルに泊まったり、美味しいものを食べさせたい。親にも、孝行してあげたい。

でも、それを叶えるだけの「何か」を、自分はまだ持っていない。焦る。

65歳から世界的企業を作った男

ここで、一人の男の話をしたい。

ケンタッキーフライドチキンの、あの白いスーツのおじいさん。カーネル・サンダースだ。

彼が経営していた小さなレストランは、近くに高速道路が開通したことで客足がぱったり途絶えた。店を手放し、借金を返したら、手元に残ったのはわずかな蓄えと、年金だけ。この時、彼は65歳だった。

普通なら、引退して余生を過ごす年齢だ。でも彼は、車にフライドチキンのレシピと調理器具を積んで、全米のレストランを回り始めた。「このレシピを使ってくれ。チキンが1つ売れたら、少しだけ分け前をくれればいい」と。

見知らぬ高齢者の飛び込み営業だ。当然、断られ続けた。それでも彼は続けた。そして、KFCは世界的なチェーンになった。

65歳で、ゼロから。それを思うと、30代は「もう遅い」どころか、まだ入り口にすら立っていない、とんでもなく早い段階なんじゃないか、と思えてくる。

起業家は、意外と若くない

実際、データもそれを裏付けている。

MITなどの研究チームが、アメリカで生まれた270万人の起業家を調べたところ、最も急成長した上位0.1%のスタートアップの創業者の平均年齢は、45歳だった。20代ではない。しかも、50歳の起業家は、30歳の起業家より、飛び抜けた成功をおさめる確率が1.8倍高いという結果まで出ている。

20代で成功した起業家がニュースになるのは、それが「珍しいから」だ。珍しいから記事になる。そして僕らは、その珍しい例ばかり見て「自分はもう遅い」と錯覚する。

家族を持ち、社会の仕組みを知り、失敗の痛みを想像でき、多少の資金と信用を持っている。そういう30代後半は、何も持っていなかった20代より、よほど戦えるはずだ。

「もう少し準備してから」という気持ちが、一番もったいないと今は思っている。そのことは、準備が整う日を待っていた話にも書いた。

「今」の経験に、お金を使っていい理由

もう一つ、最近知って、腑に落ちたことがある。

「事業が成功したら、旅行に行こう」「お金に余裕ができたら、親孝行しよう」。そうやって、いい経験を全部「未来」に先送りしていた。でも、それは損かもしれない。

コーネル大学の心理学者が続けてきた研究に、こんなものがある。生活に必要なものが一通り揃った後は、モノを買うより「経験」を買う方が、人は幸せを感じ、その満足が長続きするというものだ。

面白いのは、その理由だ。新しいテレビや服は、他人のものと比べたり、新しい型が出たりすると、色褪せていく。でも、家族と行った旅行や、子供と過ごした時間は、他人と比較しようがない。だから、満足が減りにくい。

子供と過ごせる時間が思ったより短いことを、前に書いた記事で考えた。経験を優先する理由は、そこにもある。

さらに驚いたのは、経験は「それを待っている時間」ですら幸福度を高める、という点だ。旅行の計画を立てている時のワクワク。あれ自体が、すでに幸せを生んでいる。モノを買う時の「待ち」には、その効果はないという。

未来の準備と、今の経験を、両方やる

つまり、こういうことだと思う。

未来のための準備(投資や学び)と、今を味わう経験(家族との時間や旅行)は、どちらか一方を選ぶものじゃない。両方に、ちゃんとお金と時間を割り当てていい。むしろ、その方が幸福の総量は増える。

だから最近は、全部を未来に回すのをやめた。少しずつだけど、「経験のためのお金」を先に確保するようにしている。今の自分と家族のためにも、ちゃんと使う。

30代は、遅くない。カーネル・サンダースより、28年も早いのだから。焦って自分を責める時間があるなら、今日できる小さな一歩を積み、そのついでに、来月の家族旅行の計画でも立てておこうと思う。


よくある質問

Q. 30代から事業を始めるのは、遅すぎますか?

MITの研究によると、急成長した上位0.1%のスタートアップの創業者の平均年齢は45歳。50歳の起業家は30歳より成功確率が1.8倍高いというデータもある。「30代は遅い」という感覚は、ニュースが珍しい若手成功例を取り上げ続けることで生まれた錯覚の可能性が高い。

Q. カーネル・サンダースが全米を回り始めたのは何歳のとき?

65歳頃。高速道路の開通でレストランが経営不振となり、年金と少しの蓄えだけを手に、レシピと調理器具を積んで全米を回り始めた。世界的チェーンになったのはその後。30代はその28年前だ。

Q. 経験にお金を使うことと、投資・貯蓄はどちらを優先すべき?

コーネル大学のギロヴィッチ教授の研究では、生活必需品が揃った後は「両方に枠を設ける」方が幸福の総量は増える。「余ったら経験に使う」ではなく、先に経験の予算を確保することが重要。投資と経験は対立しない。


今年行ってみたい場所を、3カ所だけスマホで調べてみる。計画を立てなくてもいい。調べ始めた瞬間から、すでに幸せが生まれている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました