兄弟げんかに、親はどこまで介入するか
うちは子供が3人いるので、兄弟げんかはほぼ毎日のように起きる。おもちゃの取り合い、順番の奪い合い。些細なことから始まって、気づけば取っ組み合いになっていることもある。そのたびに、どこまで口を出すべきか、どこから黙って見ているべきか、正直今でも迷う。
兄弟げんかというのは不思議なもので、内容を聞くと、たいていどっちもどっちだ。お互いに自分の感情の向くまま動いていて、我慢や自制が利かない。自分が正しいという主張ばかりが先に立ち、相手の言い分を聞く余裕がない。だから声を荒げ、時には手が出て、言葉でも相手を攻撃する。この組み合わせが、うちの兄弟げんかのほぼすべてだ。
何を取り合っているのか
兄弟げんかの原因を辿ると、たいてい食べ物かおもちゃに行き着く。
同じ数のおかず、同じ種類のおもちゃ。まったく同じものを同じ数だけ与えないと、「これは自分のだ」「なんであの子だけ持っているのか」「私の分はどこにあるのか」という取り合いが始まる。数が揃っていないと感じた瞬間、「なぜ自分だけ持っていないんだ」という不満に火がつく。だから、平等さを保つために、つい同じ数を用意しようとしてしまう。
介入するかどうかの基準は、戻れない怪我かどうか
止めるか、見守るか、放っておくか。正直、どれが正解かは場面によって違うと思う。
ただ、兄弟じゃなくても、人と人がぶつかり合う場面はいずれ来る。それを小さいうちに、兄弟げんかという練習の場で経験できるのは、むしろいいことなんじゃないかと思っている。
だから、うちで決めている基準は一つだけだ。危険なこと、身体的に怪我をすること、それも戻ることができないほどの怪我。これが見えない限りは、ある程度、二人の成り行きに任せて見守る。放置しているわけではなく、耳は常にそばに置いている。行き過ぎた行為や危険な兆候が見えた時だけ、間に入って止める。
直ちに危険がない場面では、お互いの主張や思いの丈を、思う存分ぶつけさせる。理性のコントロールがまだ未熟な子供にとっては、まず自分の感情を出し切ることのほうが、抑え込むことより大事だと考えているからだ。
まず二人で話し合わせる

二人で話し合って、お互いが納得したとき、けんかは自然と収まる。
だから、まだ熱くなっている最中でも、「まず二人で話し合って決めてね」と伝えるようにしている。怒りたいときは怒ればいいし、納得がいかないなら、その気持ちを相手にそのまま伝えればいい。そうやって話し合いが進んでいくんじゃないかな、という感じで背中を押す。
「お兄ちゃんなんだから」は言わない
ここは誤解されたくないので、先にはっきり言っておきたい。
うちの子供たちも、叩いたり、納得できずに手が出たりすることがある。そのとき「負けたくないなら力をつけることも大事だ」と話すことはあるが、これは暴力を勧めているわけではない。むしろ逆で、「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」ということは、うちでは絶対に言わない。
促しているのは、相手とどう話すか、どう解決するか、そして自分の中にある暴力的な衝動をどう抑えるか、そこに意識を向けさせることだ。
なぜそこにこだわるかというと、世の中には、いつか理不尽な暴力が本当に降りかかってくる場面があるからだ。そのときにどう対処するかを、小さいうちから少しずつ学んでおいてほしいと思っている。
ちなみに、発達心理学者のジュディ・ダンは、きょうだい関係を「最初の社会」と呼んでいる。幼いうちに交渉したり衝突を収めたりする経験が、後の友達関係での対人能力につながっていくという研究もあるらしい。うちの子供たちの毎日の小競り合いも、そう考えると、ただの騒音ではないのかもしれない。
もちろん、行き過ぎた暴力や、我慢が限界に近づいているときは、そのままにはしない。放っておけば自分か相手のどちらかが怪我をする、という結末は簡単に予想がつく。そういうときは、「このまま続けたらどうなると思う?」「どうして話し合いで解決できないんだろう?」と、問いかけるようにしている。答えを与えるのではなく、自分で気づかせたいからだ。
折り合いのつけ方は、教えても身につかない

お互いの摩擦の中で、どうやって折り合いをつけていくか。これは、自分の実体験を積み重ねる中でしか、身につかないものなんじゃないかと思う。教え込んで身につくものではない。もちろん、手助けすることはできる。でも最後に折り合いをつけるのは、子供自身だ。
うちの兄弟げんかへの対応は、まだ完成していない。今日は見守れても、明日は口を出しすぎるかもしれない。それでも、「戻れない怪我かどうか」という一つの基準だけは、崩さないようにしている。
よくある質問
Q:兄弟げんかで、下の子ばかり泣くのですが、上の子を叱るべきですか? A:うちでは、年齢や生まれた順番で一方だけを叱ることはしていない。泣いた・叩いたという結果だけでなく、何が起きたかを両方から聞くようにしている。
Q:何歳から「見守る」対応に切り替えていいですか? A:年齢で線引きはしていない。言葉である程度自分の主張ができるようになったら、少しずつ見守る時間を増やす、というくらいの感覚で対応している。
Q:喧嘩のたびに謝らせるべきですか? A:無理に「ごめんなさい」を言わせることはしていない。納得していない謝罪は、その場しのぎにしかならないと感じているからだ。
以前、子供に自分の言葉で理由を説明させる対話について書いたことがあるが、今回の「まず二人で話し合わせる」という対応も、根っこにある考え方は同じだ。子供の意思をどこまで尊重するかという点では、子供が「やめたい」と言ったときの対応にも通じる。そして、子供が自分の言葉で話す時間をただ見守るという姿勢は、靴屋で店員と子供のやりとりを黙って見ていた話にもつながっている。


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